【司法試験合格後】から司法修習開始までの過ごし方 written by 76期司法修習生 佐藤 和樹
1 はじめに
司法試験後から合格発表までの期間の過ごし方につきましては、別コラムにて執筆させて頂きましたが、今回は、司法試験合格後から司法修習開始までの過ごし方について、ご紹介したいと思います。
司法試験合格後、司法修習生として採用されるまでの期間、どのように過ごしたらよいのかあまりイメージが湧かない方が多いと思います。
せっかくの空いた時間、旅行等に出かけたい・・・
自分の自由な時間に使いたい・・・
勉強からしばらく離れたい・・・
もちろん、リフレッシュをする時間も必要です。
ですが、いつまでものんびりするわけにはいきません。司法修習では、司法試験で学んだ実体法・手続法の理解を前提に議論が進んでいきます。
だからこそ、司法試験合格後から司法修習が始まるまでの時間の過ごし方で、司法修習の充実度が変わると言っても過言ではありません。
そこで、以下、司法試験合格後から司法修習開始までの過ごし方につき、段階を追ってご紹介したいと思います!
2 司法試験合格直後‐司法修習生採用選考への申込み
司法試験合格直後の喜びは、決して忘れることのない一生のものでしょう。
存分に喜び、存分に応援してくれた方々への感謝を伝え、存分に仲間と喜びを分かち合いましょう。
そのうえで、1点、忘れてはいけないことがあります。
それは、司法修習生採用選考への申込みです。
司法試験に合格をしたからといって、自働的に司法修習生になるわけではありません。司法修習生として採用されるためには、適式の書類(具体的な書類は最高裁判所HPをご参照ください)を最高裁判所及び司法研修所に募集期間内に自ら提出しなければいけません。
募集期間も1週間というわずかな期間ですし、提出すべき書類の中には住民票や法科大学院、大学の成績証明書等、別途取り付けが必要なものもあり、かなりタイトなスケジュール感です。仮に、募集期間を徒過した場合は、司法修習を1年見送らなければいけないことになります。
このように、司法試験合格直後の喜びに浸ることも大切ですが、司法修習生採用選考への申込みを忘れないようにしましょう(司法試験受験の最終日に試験監督から司法修習生採用に関する案内書類もありますので、なくさないようにしましょう)。
なお、私たち76期司法修習生の採用選考の場合は、募集期間は令和4年9月6日(合格発表日)から同月13日までの1週間でした。
3 司法研修所からの贈り物‐司法研修所教材
無事に司法修習生採用選考への申込みをした後は、司法修習が始まるのを待つことになります。
ですが、ただ待っていればよいわけではありません。
司法修習が始まる前に、司法研修所から、司法研修所教材一式(いわゆる白表紙教材)が詰まった段ボールが自宅へ配送されます。まずまずの量の教材が一度に送られてきますので、心の準備をしておいた方がよいでしょう。
さて、教材が到着したとして、そのまま放置してはいけません。
なぜなら、司法研修所教材の中に、司法修習が始まる前に提出が求められている課題が同封されているからです。
当該課題は、司法研修所教材を参照したうえで課題を解くことになりますので、当該教材もきちんと読み込む必要があります。また、当該教材は司法修習期間中、継続して使用する教材ですので、この時点で一読しておくだけでも意味があります。
司法修習で学ぶことのイメージを持つことも大切ですので、教材が到着次第、一読しておきましょう。
4 条文を意識した勉強
上述しましたが、司法修習は司法試験で学んだ知識や理解を前提とした議論がなされます。
司法試験受験終了後、しばらく勉強から遠ざかっていた方もいらっしゃるかと思いますので、この空いた時間を利用し、司法試験受験時に身に付けた知識と理解を再度思い起こしておきましょう(特に、民法・民事訴訟法、刑法・刑事訴訟法については、必須です)。
その際は、(すでに受験時代にしている方も多いかとは思いますが)条文の素読をお勧めします。司法修習中、必ずどこかで「どの条文のどこに記載されていますか?」と言った質問を何度も受けることがあります。それほど、条文は大切です。
判例や規範を覚えていることも大切ですが、まずは条文を意識した勉強をしておきましょう。
5 弁護士事務所訪問
「司法試験受験後から合格発表までの過ごし方」の記事と部分的に重複をするかとは思いますが、司法試験合格後になると、より多くの弁護士事務所が事務所訪問の募集を開始し、採用活動が活発化していきます。
詳細は、別記事(弁護士事務所の内定時期はいつ頃?サマクラ・オータムクラーク・事務所訪問の実態について)にてご紹介させて頂きますが、司法試験合格発表直後は自ら、積極的に弁護士事務所を調べ、事務所訪問へエントリーすることをおすすめします。
なお、弁護士会単位で弁護士事務所採用説明会を実施することもありますので、就職予定地の弁護士会HPは適宜確認しておくことも大切です。
6 最後に
以上のように、司法試験合格後から司法修習開始までの過ごし方について、ご紹介させて頂きました。
大きな流れを整理しますと、
①司法試験合格発表→
②司法修習生採用申込み→
③司法研修所から教材が届く(受領後、課題を検討・提出)
・弁護士事務所へ訪問(なお、動きが早い弁護士事務所(大手の事務所)は、司法試験受験前後から事務所訪問をしていますので注意が必要です。詳細は別記事にて紹介いたします)→
④司法修習開始、といった流れになります。
このように、ご想像以上にやるべきことが多いことに気付かれたかと思います。司法試験合格の喜びに浸るのも大切なことですが、充実した司法修習になるよう、司法試験合格後から1歩先を見据えた時間の過ごし方をして頂ければと思います。
本記事を読まれた皆様にとって、1つでも有意義な情報を提供できていれば幸いです。また別記事にてお会いいたしましょう。